大人のADHD
大人のADHD
ADHD(注意欠如・多動性障害)は神経発達症(発達障害)の一つです。うっかりや抜け落ちやミスが多い、忘れ物や失くし物・探し物が多い、計画的な行動ができない、期限を守れない、といった「不注意」、じっとしていられない、そわそわと手足を動かすなどの「多動性」、思いついたことを深く考えずに行動に移してしまう、すぐにカッとしてしまう、物にあたってしまう、相手の話を聞かずにしゃべり続けてしまう、衝動的に買い物をしてしまう、などの「衝動性」の3つが特徴です。子どもの頃は親のフォローがあるなどしてさほど問題になっていなくても、大人になって環境が変わることで日常生活や社会生活に支障をきたしたりするようになることがあります。「やる気がない」「何度言ってもわからない」「努力が足りない」などと周囲に誤解されてしまい、社会生活への自信を失っているケースもあります。
ADHDは自閉スペクトラム症(ASD)や学習障害(LD)といった他の神経発達症を併存しているケースも多くみられます。
ADHDの治療に使用される薬剤にはメチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)、リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ)があります。服用から効果が現れるまでの時間や効果の持続時間、身体への作用に違いがあります。脳内の神経伝達物質の伝達に作用し、ADHDの主症状である不注意や多動性、衝動性に効果が期待できます。
ご本人もご家族も神経発達症の存在に気付いておられないことも多々あります。また、「そうかも知れない」と思っていても、「どうしたらよいか分からない」と感じているケースもあります。神経発達症は「そうであるかないか」と明確に線引きできるわけではなく、様々な症状の程度が存在し、日常生活や学業・仕事への影響の程度は様々です。「困りごと」もそれぞれ違うため、ご本人やご家族が感じていることを伺いながら、どのようなアプローチが可能か探っていきます。
また、「二次障害」といって、神経発達症を原因として、社会生活や日常生活がうまくいかなかったり、周囲の理解が得られない中で繰り返し注意されたりするなどにより、うつ症状や不安症状が引き起こされ、うつ病や不安障害と診断される状態になることもあります。診察ではご本人やご家族にそういったことを理解してもらえるようなアプローチも行い、必要に応じて、同意を得た上で抗うつ薬や気分安定薬、抗精神病薬などによる薬物療法を行うこともあります。