睡眠障害
睡眠障害
睡眠障害とは睡眠に何らかの問題がある状態をいいます。一般的に「不眠症」と認知されていますが、タイプは様々で身体疾患が隠れている場合もあります。入眠困難(寝つきが悪い)、中途覚醒(夜中途中で目が覚めてしまう、その後なかなか眠れない)、早朝覚醒(朝早くに目が覚めてしまう)、熟眠障害(眠りが浅い、眠ったはずなのに眠った気がしない)といったことにより、必要な睡眠時間が十分に取れず、睡眠の質が低下することで日中の眠気、疲労、集中力の低下、不調、気分変調などが起こります。
睡眠障害の治療では、生活習慣や睡眠環境を整えることが大切です。起床・就寝時刻を一定にして生活リズムを整えること、朝太陽の光を浴びるようにすること、日中適度に活動すること、夕方以降のカフェイン接種をしないこと、アルコールは控えることなどを指導します。生活習慣や環境を整えることが最も大切ですが、それでも改善しない場合や睡眠障害により日常生活への支障が大きく出ている方には睡眠薬などの薬物治療が検討されます。
加齢とともに不眠症状を呈する割合は増えていきます。入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などは年齢とともに珍しいことではなくなります。不眠症と診断がつかない程度であっても、睡眠の質の改善を図ることで、生活の質の改善につながります。
不眠症の背景にうつ病などの精神疾患が隠れている場合もあり、注意が必要です。心療内科・精神科の様々な疾患は、睡眠に関する症状が出現することが多々あります。うつ病の初期に睡眠のみの症状が出現することは稀ではありません。患者様の一番の困りごとが「眠れない」であっても、他の精神疾患が隠れていないか注意して診察・治療を進めていきます。「たかが不眠」と侮らず、生活の質が低下した状態が続く場合は早めにご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきとともに睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間に5回以上繰り返される状態を睡眠時無呼吸症候群といいます。睡眠中に低酸素状態となるため、心臓・血管系の病気や多くの生活習慣病と関連してきます。日中の強い眠気や倦怠感、起床時の頭重感などが現れ日常生活に支障をきたすこともあります。適切な診断を受け、できるだけ早く治療を始めることをおすすめします。
体内時計の調整がうまくいかず、外界の24時間周期とのずれが調整できない状態のことです。遅寝遅起きとなる「睡眠相後退症候群」、過度な早寝早起きとなる「睡眠相前進症候群」が代表的です。起床・就寝時間が毎日30〜60分ずつずれていくケースや1日の中で不規則に睡眠・覚醒が出てくるケースもあります。変則勤務や交代勤務なども影響することがあります。
ナルコレプシーは、十分な睡眠をとっているにもかかわらず日中に強い眠気が出現し、突然眠ってしまうこともある病気です。重要な会議や危険を伴う作業をしている時や会話をしている時など通常であれば居眠りすることは考えにくい場面であっても居眠りしてしまうこともあります。感情が高ぶったりした時に体の一部が脱力する「情動脱力発作」、いわゆる金縛りである「睡眠麻痺」や「入眠時幻覚」などが特徴的な症状です。
正常な睡眠では、レム睡眠中には筋肉は動きません。レム睡眠行動障害では、レム睡眠中に夢に関連して動いてしまうことがあります。大きな声を上げる、手足をばたつかせるなどの行動が見られます。無意識のうちに行動してしまっているため本人がケガをしたりすることもあり得ます。レム睡眠行動障害はレビー小体型認知症との関連が知られています。レム睡眠行動障害が出現する場合は、認知機能障害の出現にも注意していく必要があります。
睡眠障害で一般的に使用される薬剤には「いわゆる睡眠導入剤」だけでなく、様々な種類があります。以前と比べて様々なタイプの薬剤が使用できるようになっており、「睡眠薬依存」とならない治療が可能です。抗うつ薬の一種を使用することもあります。
前述した通り、生活習慣や睡眠環境を整えることを軸として生活指導(睡眠衛生指導)を行います。睡眠時無呼吸症候群などが疑われる方には検査を実施できる医療機関への受診をおすすめすることもあります。