うつ病でよく見られる精神症状には、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめない、意欲がないといったものがあり、思考力や集中力が低下し、不眠や食欲不振、疲れやすいなどの身体的症状も現れ、日常生活に支障が生じてきます。
精神的、身体的ストレスが背景にある場合や、エネルギーを使いすぎた結果として脳がうまく働かなくなる状態となり、ものの見方や考え方が否定的になる傾向もみられます。記憶力や思考力が落ちたように感じるため、「認知症になったのでは」と感じる方もいます。「なまけているだけだ」「やる気になればできる」などと言われるなど、周囲の理解が得られず、「自分はダメな人間だ」と思ってしまうなど、自責感に苦しんでいる方もみえます。
イライラ感や焦燥感が強くなることもあります。希死念慮（死にたいという気持ち）が強くなることもあり、早めの受診が必要です。
うつ病は気分障害の一つですが、気分障害にはうつ病との鑑別が必要な双極性障害（うつ状態と躁状態を繰り返す病気）などがあります。うつ病の背景に不安障害や神経発達症が存在していることもあります。うつ病かなと思ったら、自己判断をせずに早めにご相談ください。

• 気分が落ち込む
• やる気が出ない
• 好きだったものに興味がわかない
• 嬉しいはずなのに喜びを感じない
• 涙が出てくることが多い
• 集中できない
• 頭が働かない
• 仕事のミスが増えた
• 仕事の能率が落ちた
• 物忘れが増えた
• 自分は価値がないと感じる
• 自分のせいで周りに迷惑をかけていると感じる
• 消えてしまいたい、死にたい
• 食欲がない、あるいは食欲がありすぎる
• 眠れない、あるいは眠りすぎる
• イライラしやすい、いつも気が焦っている感じがする
• 体がだるい、重い
• 朝起き上がれない
• 検査を受けても異常がない
• 仕事に行けない、学校に行けない
• 朝仕事に行こうとすると気持ち悪くなる
• 朝学校に行こうとすると頭痛がする

休養

うつ病の治療で大事なのが休養です。ストレスがある環境から離れ、十分に脳神経や身体を休めることが大切です。症状の改善に合わせ、軽い運動や家の手伝いなど、できることから少しずつ始めていき、社会復帰を目指します。

薬物療法

抗うつ薬を中心に、必要に応じて睡眠薬や気分安定薬などを併用して治療を行います。
抗うつ薬は脳内の神経伝達系に作用します。抗うつ薬には様々な種類（三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、NaSSAなど）があり、効果や副作用など患者様との相性を見ながら調整していきます。薬物療法は患者様と相談しながら必要最小限にするように心がけています。

心理教育

うつ病では「認知の偏り」がよく見られます。例えば、「上司に怒られた→自分は職場で役に立たない、ダメな人間だ→上司も同僚もみなそう思っているに違いない、自分なんかこの職場に必要ないし、いない方が周りのためだ」といった思考パターンです。
うつ状態の時は些細なことで自分を責めてしまったりもします。診察ではこの点にも着目し、認知の偏りの修正を目的に、考え方のアドバイスなどを行っていきます。ポジティブな思考とまではいかなくても、過度にマイナスな考え方にならないような習慣を身につけることが目標です。うつ病の回復には日常生活の過ごし方もポイントになりますので、生活の様子を確認し、助言を行います。

その他の治療（※当院では行っておりません）

●反復経頭蓋磁気刺激治療法(rTMS)
専用の機器を用いて、脳の特定の部位に繰り返し磁気を利用した電気刺激を行い、低下している脳の機能を正常な状態に戻していく治療法です。
●電気けいれん療法（ECT）
呼吸管理のもと、麻酔薬や筋弛緩薬を用いて、こめかみにつけた電極を通して脳に電流をごく短時間流し、脳のけいれんを誘発して脳の機能を回復させる治療法です。