適応障害
適応障害
仕事上の問題、学業上の問題、健康上の問題、経済的な問題、対人関係の悩みなどのストレス因子をきっかけとして、ストレスにうまく対処できない結果、さまざまな心身の不調が現れ、日常生活や社会生活に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性があります。ストレス因子に対する反応であり、情緒面や身体面、行動面で多彩な症状がみられます。うつ病と似たような気分の落ち込みが認められることもあります。因果関係のはっきりしているストレスがあり、その原因が解決すると症状は次第に改善する傾向にあります。ストレス因子が持続する場合には症状が長引くこともあります。ただし、うつ病など他の精神疾患と診断され得る状態の場合は、ストレス要因が明確な場合でも、診断は適応障害ではなくうつ病などの診断となります。
うつ病と同じように、「なまけているだけだ」「やる気になればできる」などと言われたり、「本人の能力の問題だけだ」と周りに誤って認識されたりするなどして、周囲の理解が得られず苦しんでいる方も多くみえます。適応障害は本人の適応能力の問題だけとは限りません。どうしても合わない仕事や人間関係などに悩み、努力や工夫をしてみたけどどうにもならず、心身の不調(気分が落ち込む、食欲がなくなる、夜眠れなかったりする、職場や学校に行こうとすると頭痛や吐き気がする、など)を感じることは誰でも経験し得ることです。適応障害は誰でもなる可能性があります。
また、当初は適応障害と診断されていた患者様でも、ストレス要因が続くうちにうつ病などと診断される状態になることがあります。「自分の努力が足りないだけだ」などとは決め付けず、日常生活や社会生活に支障がある場合は早めにご相談ください。
うつ病と同じく、出現している精神症状や身体症状に合わせて、抗うつ薬を中心に必要に応じて睡眠薬や抗不安薬、気分安定薬などを併用して治療を行います。抗うつ薬は脳内の神経伝達系に作用します。抗うつ薬には様々な種類(三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、NaSSAなど)があり、効果や副作用など患者様との相性を見ながら調整していきます。薬物療法は患者様と相談しながら必要最小限にするように心がけています。
適応障害の治療では、後述するようにストレス要因へのアプローチが重要であるため、薬物療法は治療のメインではなく、補助的なものとお考えください。
原因となっているストレス要因の除去や軽減が適応障害の治療で最も大切です。そのため職場や学校などから一時的に離れ、その間に環境調整を行うことをおすすめすることがあります。必要な場合は、休養や環境調整を目的として診断書を発行することもあります。
うつ病と同じく「認知の偏り」が見られることもあるため、認知の偏りの修正を目的に、考え方のアドバイスなども行っていきます。回復には日常生活の過ごし方もポイントになるため、生活の様子を確認し、助言を行います。